湖畔の蝶乱舞
話は遡るが、前々回書いた採集旅行にはまだ続きがある。この後、ラグーナ・ラチュアという所を訪れたからだ。ここはアルタ・ベラパス県北西部にある国立公園。県都のコバンから車で2時間半近くもかかる。ずっと行ってみたいと思っていたところ、ちょうど国立サン・カルロス大学の研究者が調査に行くというので、同行させてもらえることに。どんな昆虫が見られるのだろうかと期待に胸が膨らむ。
公園入口の事務所で手続きを済ませた後、いざ森へ。一歩足を踏み入れた途端、巨木生い茂る薄暗い熱帯雨林が広がっている。
目を凝らしながら林道をゆっくり歩いていくが、なかなかめぼしい虫は見つからない。陽が差し込むギャップには蝶がもっといても良さそうなものだが、見かけるのはセセリチョウがほとんど。
セセリチョウの一種 Drephalys dumeril (Heperiidae)
1時間半後(普通に歩けば30分ほどの距離だが)、視界が急に明るくなる。眼前に広がるのは、ターコイズブルーの湖。だが、僕の目はその手前の地面に釘付けに。そこには何十頭もの色とりどりの蝶が飛び交っている! まさに蝶吹雪!
テクサウズマキタテハ Callicore texa (Nymphalidae)
アゲハチョウ2種 Papilio androgeus & Papilio thoas (Papilionidae)
シロチョウ2種 Glutophrissa drusilla & Melete lycimnia (Pieridae)
ペトレウスツルギタテハ Marpesia petreus (Nymphalidae)
チロンツルギタテハ Marpesia chiron (Nymphalidae)
ハルモニアツルギタテハ Marpesia harmonia (Nymphalidae)
蝶の集団吸水は今まで何度か見たことがあるが、これほどの規模のものは初めて。特に圧巻だったのは、格好いいツルギタテハが3種同時に見られたこと。petreusは一昨年ロス・セリートスで、chironは昨年ホンジュラスでそれぞれ見たことがあるが、harmoniaは今回初。
30分ばかり夢中でシャッターを切り続けた後、ようやく湖の光景を眺める余裕が出てきた。
ラチュア湖 Laguna Lachuá
オリオンタテハ Historis odius (Nymphalidae)
翌朝、バナナトラップ回収に再び訪れた時には、こんな美蝶を目撃。このサイズと色合いだが、れっきとしたシジミチョウの仲間。
トキセアマルバネカラスシジミ Eumaeus toxea (Lycaenidae)
今回は甲虫類はほとんど採れなかったが、蝶はたくさんいたし、何よりグアテマラの自然の新たな一面を垣間見られたので、満足だった。ここにはあの白モルフォMorpho polyphemusも生息しているそうだ。ぜひまた来てその姿を見てみよう、その時は森の中で灯火採集をしようと、早くも次回に向けたアイデアが湧き上がってくる。