巨大トカゲ棲む森:動物編
今回は前回の続きで、例の乾燥林の動物相を紹介。実は、1週間前にまたこの保護区を訪れた。なぜこんなに頻繁に通っているかというと、チョウのモニタリングをすることにしたからだ。月1回チョウの種類を記録していくだけだが、継続調査を通して何らかの季節性のパタンが検出できればと目論んでいる。
フェブルアカスリタテハ Hamadryas februa (Nymphalidae)
乾燥林を代表する蝶の一つがカスリタテハ。低地熱帯林にも広く分布するが、この種の渋い色合いは乾季の森によく似合う。常に頭を下にして静止し、オスは縄張りに侵入した他オスを追い払う際にパチパチという音を出す(ただし発音行動を示す種と示さない種がいるらしい)など、興味深い行動的特徴を有するチョウだ。
乾季ということで全体的に種数は少なかったものの、シロチョウ科のKrigonia属、Phoebis属, Eurema属の種が多く見られた。いかんせん俊敏に飛翔するため、ほとんど採集できなかったが…。他に多かった種としては、ジャノメチョウの一種(Cyllopsis sp.)とモニマタテハ(Eunica monima)で、どちらも地味な色合いの種だ。。
他に見かけた虫も、地味な色彩のものが多かった気がする。
カマキリの一種 Mantidae sp.
そして、最もよく目につく虫がアリジゴク。巣の形は日本にいる種とよく似ている。砂地の場所が多いので、彼らの営巣地としてはうってつけだろう。
ウスバカゲロウの成虫(左)と幼虫の巣(右) Myrmeleontidae sp.
昆虫以外では、こんな奇怪な虫も!
ウデムシの一種 Amblypygi sp.
ヒヨケムシの一種 Solifugae sp.
どちらもクモ・サソリの仲間(Arachnida)。世界三大奇虫などと呼ばれているらしいが、中米の乾燥域では普通に見られる種だ。実際、ウデムシはロス・セリートスで前に何度か見たことがあるし、ヒヨケムシのほうはこの保護区で二回も目撃した。
初回の訪問時には、林道でこんなものを発見!
チャズキンハチクイモドキの死骸 Momotus mexicanus
一般に、鳥の死骸を見つけるのは非常に難しいので(捕食者が持ち去ってしまう上に、すぐに分解されるから)、こんな完全な形のものが見られたのは幸運だった。
生きている個体には何度も遭遇。尾羽の形が何とも特徴的だ。ちなみに、ロス・セリートスにはアオマユハチクイモドキ Eumomota superciliosaという別種が分布している。
チャズキンハチクイモドキ Momotus mexicanus
他にもウツクシキヌバネドリ Trogon elegansという、胸が真っ赤な美鳥も目撃。この森は野鳥の宝庫でもあり、今までに60種以上も記録されている。
さあ、本日の、そしてこの森の主役、登場!
モタグアドクトカゲ Heloderma charlesbogerti (Sauria: Helodermatidae)
グアテマラにのみ、それもこの地域にのみ分布する固有種。メキシコドクトカゲHeloderma horridum の亜種だったが、最近、種に格上げされた(上記の和名は仮)。
体長は60cmはあるだろうか。英名Beaded lizardの通り、体はビーズ状の鱗で覆われている。この個体は園内での飼育・鑑賞用にスタッフが特別に捕獲したもの。乾季には極端に活動性が鈍るため、野生の個体を見つけるのは極めて難しい。写真では見たことがあるが、やはり実物を目にすると感慨もひとしお。
スタッフが手慣れた手つきで首根っこをつかみ、口の中を見せてくれた。下顎に毒腺があるが、攻撃性が弱いため、何もしなければ向こうから噛みついてくることはほとんどないようだ。
最後に、おまけとして第3回の訪問時の写真を。乾季もそろそろ終わりに近づいているため、セミが盛んに鳴いていた。灯火採集では、セミに加えてミツバチも多数飛来。分封の時期なのだろうか?
植物では、前回紹介したドゥルーチェの実を発見。テコマスーチェやカルコモも花期が終わり、代わりにバイニージョという木が開花。森の景観や気候からだけだと、一見、変化がないように思えるが、実際は徐々に季節は変化していっているのだ。あと1か月もすれば、いよいよ雨季が到来。さて、どんな生き物たちが現れるのだろうか。来月の調査が今から心待ちだ。
Durucheの実 Bonellia macrocarpa (Thephrastaceae)
Vainilloの 花 Senna candolleana (Caesalpiniaceae)