生物学シンポジウムを終えて
先週、首都のサン・カルロス大学でCongreso Nacional de Biologíaというシンポジウムが開催された。Biología(生物学)と題されているが、テーマは基礎生物学から気候変動、環境ガバナンス、感染症、農産物まで、多岐にわたっている。私は今回2つのプレゼンをすることに。一つは流域管理の小集会。もう一つは環境教育のセッションで、現在作成中のグアテマラ昆虫図鑑について発表。スペイン語でのプレゼンは未だに緊張するが、幸い多くの人に興味を持ってもらえたようで、一安心。
図鑑のプレゼンでは、中身の紹介に加えて、活用に関するアイデアも提示。一つは、大学の講義・実習等での活用。私が今いる大学では昆虫学の講義があり、その中で昆虫の採集・標本作製・種同定も一通り行うので、学生らによる活用が期待される。もう一つは、小中高校の理科の授業。ただし、先生や生徒にただ図鑑を渡すだけでは不十分なので、彼らに活用方法のアドバイスや内容の解説をしたり、生徒の学年・レベルに合わせた教材を新たに作ったり、必要とあれば教員対象の研修会を開いたりするなど、何らかのサポートが必要だろう。それ以外では、自然保護区での活用。バードウォッチングのツアーではガイドが鳥の図鑑を携行していることが多いが、同じことをこの図鑑でもできないかというわけだ。
いずれにせよ、これらの活動を行うにあたっては、協力者(機関)を見つけることが不可欠。その意味でも、今回のシンポでいろいろな機関の人たちに出会えたのは有意義だった。なかでも、サン・カルロス大学の自然史博物館と植物園は、ボランティアガイド養成講座や市民向けの環境イベントなど多くの活動を実施しており、何よりこの図鑑に大いに興味を示してくれているので(ちなみに博物館は3年前に昆虫展を開催した場所)、引き続き強力なパートナーとなってもらえそうだ。また、動物園のスタッフから、園内での環境教育活動に使いたいと言ってもらえたのも有難かった。いろいろアイデアは膨らむが、11月にプロモーション集会を開く予定なので、まずはこうした機会を通して諸機関との関係作りから始めていきたい。
一般講演は少ししか聴けなかったが、いくつかの発表を見た感じでは、生物多様性の研究はアセスメント・モニタリング面に偏っている印象を受けた。もちろん、いろいろな場所で生物相を記載していくのは非常に重要なことなのだが、これらの発表からはいまいち面白さが感じられず、何かしら物足りない気がした。あと、同じ研究者が複数の講演に名を連ねているのも気になる。グアテマラでは研究者の数が少ないので、一人が複数のプロジェクトを回すのはよくあることだろうけど、それでももっといろんな人たちがもっと多様なテーマの発表をすればなあと感じたのも事実。
その中で印象に残ったのはポスター発表。発表者はわずか10人ほどだったが、森林環境要因がキノコ群集に及ぼす影響の発表と、土壌中と苔の中の花粉・菌根菌のフロラの発表が特に目を引いた。どちらも着眼点がユニークで、今後の発展が楽しみな内容だった。グアテマラでは菌類はほとんど調査されておらず、どんなキノコが分布するかさえもわかっていない。これらの菌類研究が進展すれば、菌食性昆虫群集の研究にも大いに寄与するのではと期待が高まる。
最後に、キノコの写真を。これらは先々週にParque Cayaláで見つけたもの。ここでも例のウラモジタテハを目撃したのだが、その話は次回に譲るとしよう。
数字蝶の謎 ~その2~
グアテマラの名産品と言えば、言わずと知れた、コーヒー。中米に詳しくない人でも、グアテマラと聞けば、真っ先にコーヒーが思い浮かぶのではないだろうか。総生産量は数年前にホンジュラスに追い抜かれたものの、品質とブランド力は中米一であることは間違いない。今日は、そんなコーヒーにまつわる話。先週の金・土曜に、同僚のつてでコーヒー農園で昆虫調査をする機会を得た。さあ、今回はどんな出会いが待ち構えているのだろうか。
ここはサンタ・ロサ県のサンタ・イサベル農園(Finca Santa Isabel)。100年以上前に設立された歴史ある農園だ。写真のように、野生の樹木をシェードツリー(陰を作るための植物)として残し、その周りにコーヒーを植えるという環境配慮型農法が行われている。
農道沿いには数多くの蝶が舞っている。水たまりで集団吸水している個体もいる。大半は普通種だったが、格好良いツルギタテハが見られたのは嬉しかった。
チロンツルギタテハ Marpesia chiron (Nymphalidae)
コーヒーの周りには雑草が繁茂しているため、バッタ・キリギリスが非常に多い。
キリギリスの一種 Tettigoniidae sp.
バッタといえば、こんな巨大種も! 地元の人が数日前に捕まえておいてくれたもの。何度見ても、その形、色、そして大きさにはびっくりさせられる。
ヨロイバッタの一種 Tropidacris cristata (Romaleidae)
印象的だったのは、様々な種類のキノコが見られたこと。前述のように雑草が多くて下層植生が維持されているために適度な土壌水分が保たれており、さらに落葉・落枝・倒木といった腐植物も十分に供給されているからだろう。そして、これらのキノコにはまた多様な菌食性昆虫が生息している。同僚がこれらの虫を喜び勇んで採集していく。
夜には例のごとく灯火採集を実施。すぐ前に小さな川があるせいか、カゲロウやヘビトンボなどの水生昆虫が飛来。甲虫が少なかったのは残念だったが、ツバメガをはじめとする新顔の昆虫を見られたので満足。
ヘビトンボの一種(メス) Corydalus sp. (Corydalidae)♀
ツバメガの一種 Uranidae sp.
スズメガの一種 Perigonia sp. (Sphingidae)
翌朝、何気なく辺りを散歩していると、金属光沢の蝶が飛来。慌てて捕まえてみると、なんとプルラで見たアンナウラモジタテハDiaethria anna! ここの標高は約1050m。よって、この時点で標高仮説(標高1400m付近を境にD. anna とD. astalaが住み分けている)は棄却された。
その後、同僚と共に調査開始。農道を歩いていると、再びメタリックブルーの蝶が…。青色が若干濃い気がする。もしやと思い、捕まえてみると、なんと今度はアスタラウラモジタテハ D. astala! 要するに、ここでは二種が共存しているのだ。その後も次々とウラモジタテハに遭遇。観察個体数は、D. annaが7個体、D. astalaが2個体。サンプル数が少ないものの、現時点ではアンナの方が優占傾向にあるようだ。
さあ、この結果は何を意味するか? なぜロス・セリートスではアスタラしか分布せず、プルラにはアンナしか分布しないのに、ここでは両種が見られるのか? 謎は深まるばかり…。と同時に、俄然面白くなってきた。
アスタラウラモジタテハ(左)とアンナウラモジタテハ(右) Diaethria astala & D. anna
珍獣うごめく森
今日は、1か月前の調査旅行の話。行き先は、西部のアティトラン火山の山裾に位置するロス・タラレス自然保護区 Reserva Los Tarrales。野生動物の宝庫で(特に鳥の種類が多い)、昆虫も豊富だと聞いていたことから、いつか行ってみたいと思っていた。
この保護区の面白いところは、標高によって異なる景観の森が見られる点。麓付近(700 m)には熱帯雨林が広がっているが、1000mを超えたあたりから雲霧林帯へと移行する。今回は時間の都合上、雲霧林まで行くことはできなかったが、それでも麓の森で多くの生き物に出会うことができた。
森に入ると、早速カラフルな蝶がお出迎え。瑠璃色の紋をちりばめたカスリタテハHamadryas amphinome、黒地に赤紋を持つアゲハParides 、などなど。ふとホンジュラスにいた時のことを思い出して懐かしい気分になる。というのも、当時よく通っていた森もちょうど標高700~800 mで、こられの蝶が生息していたからだ。下の写真の種もその一つ。
ウラナミタテハ Colobura dirce (Nymphalidae)
ヘレノールモルフォ Morpho helenor montezuma (Nymphalidae)
ヘレノールモルフォはグアテマラには3亜種分布するらしい。東部のイサバル県の低地に分布するoctaviaに比べて、montezumaはメタリックブルーの色が若干薄い。最初見た時はモルフォだと気づかなかったほどだ。
森の中のログハウスに荷物を運び終え、下のトイレの戸を開けると、そこにはなんと!
オオゴキブリの一種 Archimandrita tessellata (Blaberidae)
体長7cmもの巨大種との遭遇に、思わず歓喜の声をあげそうになる。幸先の良さに気を良くしながら、灯火採集に準備に取りかかかる。ログハウスの周りには全く明かりがないので、ナイターにはうってつけの場所だ。さあ、今夜はどんな虫たちがやって来るのだろうか。
と期待した割には、それほど大した収穫はなし。この辺りは農園が隣接していて、切り開かれてしまっているせいだろう。でも、下の写真のような面白い種が見られたので満足。特に、昼行性のセセリチョウ、それもこんな美麗種が飛来したのは意外だった。
ヘリカメムシの一種 Coreidae sp.
コメツキムシの一種 Chalcolepidius lacordairei (Elateridae)
セセリチョウの一種 Phocides sp. (Heperiidae)
翌朝、再び林道を散策し、多くの蝶を目撃。そして、こんな奇虫にも…。
ツノゼミの一種 Guayaquila sp. (Membracidae)
ツノゼミは、こうして成虫・幼虫が同居している場合が多いのだが、それにしても幼虫もこんなに立派な角を備えているのには恐れ入る。そして、小さなツノゼミの体表には、なんとさらに小さなダニがくっついているではないか!
そして、今回の旅の最大の成果は、5種類もの哺乳類に出会えたこと。一つ目はリス。まあ、これはグアテマラならどこにでもいる普通種だ。お次はアグーチ(グアテマラではcotuzaと呼ばれている)。林道をリズミカルにちょこちょこ走っていく。これもホンジュラスで何度か見たことがある。そして、木から木へ群れで移動中のハナグマ(スペイン語ではpizote)。ハナグマはティカル遺跡では普通に見られるが(観光客による餌付けが問題になっているらしい)、こうして森の中で見ると、またひと味違った趣がある。そして、下の写真の2種。
オジロジカ Venado cola blanca
ハリネズミの一種 Puerco espín
灯火採集の準備をしていると、目の前にシカの親子が…。驚いたことに、近寄っても逃げる様子がない。前述のように農園があって人が結構出入りしているので、人馴れしているのだろうか。おかげで、近距離でじっくり観察することができた。
ハリネズミもここまで間近で観察したのは初めてだ。こちらを恐れる様子もなく、ゆっくりとした動作で葉を食んでいる。長く伸びた前歯がなんとも愛くるしい。
通常、野生の哺乳類の大半は夜行性で警戒心が非常に強いため、なかなかお目にかかることはできない。その意味でも、立て続けにこれほどの種に出会えて、非常に幸運だった。1泊2日の慌ただしい旅だったが、グアテマラの自然の新たな一面を垣間見た素晴らしいひとときだった。
都会のオアシス
先週木曜に、ふと思い立って近所の公園Parque Ecológico Cayaláへ。ここに広がる約10haの森には多くの生き物が生息している(鳥だけでなんと100種以上)。大都市グアテマラシティーに残る貴重な自然の一つだ。市民の憩いの場であり、環境教育の場でもある(管理母体のNGOがリサイクル活動や自然観察会などを実施)。僕にとっても昆虫観察の絶好のフィールドであり、1~2か月おきにこうして調査に訪れている。
林道に入ると、早速様々な直翅類に遭遇。
バッタの一種 Acrididae sp.
ササキリの一種 Tettigoniidae sp.
オンブバッタの一種 Sphenarium sp. (Pyrgomorphidae)
カマキリの卵嚢
コガシラアワフキの一種 Huaina inca (Cecropidae)
このアワフキムシは、ロス・セリートスでもよく見た普通種。幼虫が唾のような物質を分泌してその中で暮らすことから、この名が付けられている。
ここ最近、また雨がよく降るようになってきたので、蝶も増えてきているかなと期待していたが、それほど多くの種は見られなかった。下の種も広域分布(ロス・セリートス及びビオトポにも生息)の普通種。
産卵するスカシトンボマダラの一種 Dircenna klugii (Ithominiinae: Nymphalidae)
蝶を待っていると、草むらからこんな爬虫類がひょっこり顔を出す。
トカゲの一種 Ameiva sp.
今日はあまり収穫はなかったなあと思いながら、林道入口付近に戻ってきたその時、草むらにとんでもない形をした虫が!
ツノゼミの一種 Cladonota sp. (Membracidae)
そして隣の草むらを見ると、そこにもまた! 角の形が先ほどの種と異なっている。
ツノゼミの一種 Cladonota sp. (Membracidae)
ツノゼミの角は中胸の一部が変化したもの。その形・色たるや実に多様で、本当に興味が尽きない。これほど立派な突起をもった種を実際に見るのは初めてなので、感激もひとしお。Parque Cayaláの自然の魅力をまた一つ発見したひとときだった。
ただ、喜んでばかりもいられない。公園のすぐ外で宅地造成が行われているからだ。園内にまで響き渡るエンジン音。林道を隔てた向こう側には、切り開かれて一面赤茶けた、見るも無残な光景が…。ここまで隣接した場所で工事が行われたら、園内の自然にも影響があるのではと、気がかりでならない。首都に残存する貴重な自然がこれ以上傷付けられることのないよう、切に願う。
数字蝶の謎
すっかりご無沙汰してしまった。忙しさにかまけて更新を怠ってしまい、ブログの存在すら忘れかけていたが、ブログ開設から1年のこの節目の日に再開したい。
まずは、直近の昆虫調査の話から。8月19日にアルタ・ベラパス県のサン・ペドロ・カルチャ市(以下、カルチャ)のカルダモン農園を訪問。害虫の研究をしている友人の調査に同行させてもらえることになったからだ。カルチャは、県都コバンから車で15分ほどの所にある小さな町。前日夕方に現地入りし、宿泊したホテルで灯火採集を試みる。敷地内に小さな林があるので、どんな虫が来るだろうかと期待が高まる。
ロスチャイルドヤママユ Rothschildia orizaba (Saturniidae)
シデムシの一種 Oxelytrum discicolle (Silphidae)
ヨコバイの一種 Cicadellidae sp.
結果はまずまずといったところ。めぼしい虫は少なかったが、久々に巨大ヤママユガが見られたので満足。ちなみに、シデムシはグアテマラにはわずか3種しか分布しない。
翌朝、友人とともに例の農園へ。カルダモンは南アジア原産のショウガ科植物で、種子が香辛料として利用されている(インドカレーの材料の一つ)。アルタ・ベラパス県では広範囲にわたって栽培されており、コーヒーと並ぶ主要作物。ただし、国内で消費されることはなく、全てインドや中近東などへの輸出用だ。
カルダモンの葉
カルダモンの花と実
彼の研究対象は、実を食害するカルダモンアザミウマ Sciothrips cardamomi (Thysanoptera)という微小昆虫(体長1~2mm)。食害されても実の中身にはほとんど影響しないが、見た目が悪くなるため、市場価値が大きく低下してしまう。さらに厄介なことに、成虫・幼虫ともに巻葉の付け根や未成熟花序の先端部に潜り込んでいるため、天敵を用いた生物防除が使えない。防除法としては、農薬散布か、葉をめくって一頭ずつ手で潰すといった原始的な方法しかないのが現状だ。
農道でこんな甲虫を発見! 体長2cm以上もの大型種だ。
オオキノコムシの一種 Gibbifer guatemalae (Erotylidae)
調査は昼過ぎに終了し、帰途につく。その後、僕だけ途中のビオトポ・デル・ケツァール(バハ・ベラパス県プルラ市)の前で下ろしてもらう。すぐ近くにある宿で昆虫調査をするためだ。協力隊員時代には、サラマから近かったこともあって、この宿にも何度もお世話になったが、首都に移り住んでからはもう1年以上行っていなかった。
ここでも、同様に灯火採集を実施。珍虫は得られなかったが、前日に比べたら多くの昆虫が飛来した。
メダマヤママユ Automeris pallidior (Saturniidae)
エレクトラヤママユ Lonomia electra (Saturniidae)
ヒトリガの一種 Arctiidae sp.
ヒサシサイカブト(メス) Heterogomphus chevrolati (Dynastinae: Scarabaeidae)♀
ウグイスコガネ Platycoelia humeralis (Scarabaeidae)
この旅で思わぬ収穫があった。両調査地でウラモジタテハを採集したのだが、なんとこれら2個体は別種だったのだ(カルチャの個体はDiaethria astala、プルラの個体はD. anna)。翅の裏の数字模様はほぼ同じだが、表の模様が顕著に異なる。ちなみに、サラマのロス・セリートスに分布するのはastalaの方だ。これを地図上で見てみると、サラマから北上してプルラに行くとannaに置き換わり、さらに北上してカルチャまで行くと再びastalaが現れる、という興味深いパターンが得られる。標高は、サラマが950~1150m、カルチャが1300m、プルラが1500~1600m。この分布は標高のみで決まっているのだろうか? それとも標高以外の要因も影響しているのだろうか?
アンナウラモジタテハ(翅の表面と裏面) Diaethria anna (Nymphalidae)
アスタラウラモジタテハ(2011年7月29日撮影、サラマ) Diaethria astala (Nymphalidae)
最後に、グアテマラの国鳥の写真を。1年ぶりに見るその姿は、やはり得も言われぬほど美しかった。オスは繁殖を終えると、その長い飾り羽を落としてしまう。繁殖期が終わりに近づいているこの時期に、飾り羽を持った個体が見られたのは幸運だった。
ケツァール(オス)
湖畔の蝶乱舞
話は遡るが、前々回書いた採集旅行にはまだ続きがある。この後、ラグーナ・ラチュアという所を訪れたからだ。ここはアルタ・ベラパス県北西部にある国立公園。県都のコバンから車で2時間半近くもかかる。ずっと行ってみたいと思っていたところ、ちょうど国立サン・カルロス大学の研究者が調査に行くというので、同行させてもらえることに。どんな昆虫が見られるのだろうかと期待に胸が膨らむ。
公園入口の事務所で手続きを済ませた後、いざ森へ。一歩足を踏み入れた途端、巨木生い茂る薄暗い熱帯雨林が広がっている。
目を凝らしながら林道をゆっくり歩いていくが、なかなかめぼしい虫は見つからない。陽が差し込むギャップには蝶がもっといても良さそうなものだが、見かけるのはセセリチョウがほとんど。
セセリチョウの一種 Drephalys dumeril (Heperiidae)
1時間半後(普通に歩けば30分ほどの距離だが)、視界が急に明るくなる。眼前に広がるのは、ターコイズブルーの湖。だが、僕の目はその手前の地面に釘付けに。そこには何十頭もの色とりどりの蝶が飛び交っている! まさに蝶吹雪!
テクサウズマキタテハ Callicore texa (Nymphalidae)
アゲハチョウ2種 Papilio androgeus & Papilio thoas (Papilionidae)
シロチョウ2種 Glutophrissa drusilla & Melete lycimnia (Pieridae)
ペトレウスツルギタテハ Marpesia petreus (Nymphalidae)
チロンツルギタテハ Marpesia chiron (Nymphalidae)
ハルモニアツルギタテハ Marpesia harmonia (Nymphalidae)
蝶の集団吸水は今まで何度か見たことがあるが、これほどの規模のものは初めて。特に圧巻だったのは、格好いいツルギタテハが3種同時に見られたこと。petreusは一昨年ロス・セリートスで、chironは昨年ホンジュラスでそれぞれ見たことがあるが、harmoniaは今回初。
30分ばかり夢中でシャッターを切り続けた後、ようやく湖の光景を眺める余裕が出てきた。
ラチュア湖 Laguna Lachuá
オリオンタテハ Historis odius (Nymphalidae)
翌朝、バナナトラップ回収に再び訪れた時には、こんな美蝶を目撃。このサイズと色合いだが、れっきとしたシジミチョウの仲間。
トキセアマルバネカラスシジミ Eumaeus toxea (Lycaenidae)
今回は甲虫類はほとんど採れなかったが、蝶はたくさんいたし、何よりグアテマラの自然の新たな一面を垣間見られたので、満足だった。ここにはあの白モルフォMorpho polyphemusも生息しているそうだ。ぜひまた来てその姿を見てみよう、その時は森の中で灯火採集をしようと、早くも次回に向けたアイデアが湧き上がってくる。
久々の採集
気がつけば暦は10月。9月は、9日間のコロンビア旅行、帰ってきてからは論文作成と、慌ただしい1か月だった。
そういうわけで、昆虫採集もここ最近ご無沙汰だったが、昨日久しぶりにその機会が訪れた。大家さんの息子さんが案内してくれることになったのだ。実は彼も蝶好きで、よくあちこちに採集に出かけているらしい。今回の行き先はサカテペケス県スンパンゴ市郊外。スンパンゴと言えば、死者の日(11月1日)の大凧祭りで有名な街だ。
トウモロコシ畑
どんな森かと期待していたら、どこまで行っても畑ばかりで、いささかがっかり。でも、所々に花が咲いており、甲虫やハチなどが集まっている。チョウも、数は少ないものの、ちらほら飛んでいる。一番目立っていたのはこの種。
オオカバマダラ Danaus plexippus (Nymphalidae)
何百キロも渡りをすることで知られている有名な蝶。スペイン語ではMonarcaと呼ばれている。サラマでは数回しか見かけなかったが(近縁種のエレシムスカバマダラD. eresimusの方が多かった)、首都では先週だけですでに3個体目撃。おそらく標高の違い(サラマは約950m、首都は約1500m)が原因ではと思われる。
出会えた蝶は全部で十数種。その大半は普通種だったが、初顔の種もいくつか採集できた。甲虫は、花や葉の上にいたコガネムシ、タマムシ、ハムシ、ケシキスイなどを目撃したが、いずれも小型種ということもあって、ほとんど撮影できず。
タマムシの一種 Buprestidae sp.
コガシラアワフキの一種 Cercopidae sp.
バッタの幼虫 Acrididae sp.
先週は雨が多かったが、この日はからりと晴れ上がって、気持ちの良い1日だった。雨季もそろそろ終わりに近づいてきているようだ。